用語集

システムアプローチに関する用語解説です。


関係構造図

システムにおける要素の関係と構造とを可視化する思考ツール。詳しくはこちら

 

開発コンパス

事象をNEWSで整理するモデリング。N : Nature, E : Economy, W : Who decides?/ Welfare, S : Society.  

 

システム System

相互につながっている一連の構成要素の集まりのことを指す。システムの構成要素は構造を形作るとともに、その構造は総体としての挙動(振る舞い)を示す。

古典ギリシア語では共に(sy)立つ(stems)の意味。

  • 全体は部分の総和以上.
  • 問題はつながっている.解決策もつながっている. Problems are interconnected - and so are solutions (18/2/1988, Meadows, Donella)

システムアプローチ Systems Approach

システムの見方・考え方(システム思考やネットワーク思考)に基づき、複雑な物事を理解し対処すること。システムズアプローチとも言われる。

一言で言えば、「相互関係から成り立っている構造を把握することと、その構造が生み出す全体的な挙動を捉える方法」

・相互関係 を理解することとは,事象の間のつながりを理解すること。事象の「関係」と「構造」を捉えること。
・全体 を理解することとは,事象の相互関係が過去ー現在ー将来という時間軸の中でどのような「振る舞い」(behavier)を見せるかを理解すること,予測すること。相互関係が生み出す,システムのダイナミックな振る舞いを捉えること。

  • システマティック(systematic)… 「システムの構造について」あるいは「構造的」の意味。
  • システミック(systemic) … 「システムの全体について」あるいは「全体的」の意味。
 

複雑 Complex

システムとしての複雑さは、その振る舞いの複雑さであり、予測の困難さである。

要素が多いと複雑になるともいえないため、一般的に使う複雑とは若干意味が異なる。要素が少なくとも複雑になりうるし、反対に、要素が多くとも複雑ではないシステムもある。


世界は複雑化している.複雑さは現代世界の属性の一つであり,どうやってコントロールするかが現代的課題.

Non sequitur. SIMPLE BUT WRONG VS COMPLEX BUT RIGHT. Wiley Miller. http://www.gocomics.com/nonsequitur/2016/01/20

「簡単だが間違っていることと,複雑だが正しいこと。選ぶならどちら?」

ミステリー Mystery

 Thinking through Geographyにおける学習方法としてのミステリー。詳細はこちら

地理教育でのシステムアプローチ Systems Approach in School Geography

 システムの見方・考え方(システム思考やネットワーク思考)に基づいて、地理的事象・課題の構造(システマティック:要素と関係性)と,挙動(システミック:時間経過によるシステムの変化)を理解し、世界を観察・考察する教育/学習方法(Mehren et al. 2016)

 

「地域や現代的課題について、そこでの地理的な諸事象の「相互関係」と、相互関係が積み重なってできている「全体」の振る舞いを考える方法」

地理システムコンピテンシー Geographic Systems Competence

システム思考を用いて複雑なシステムの構造に気づかせるとともに、構造が生み出すシステムの全体的な挙動を理解し,システムに適応した形での持続可能な課題解決を考える資質・能力

参考:ドイツ語圏の地理システムコンピテンシー

ループ図

システムのフィードバックループを考えるための思考ツール

 

ストック&フロー図

システムにおけるストック(貯蔵)とフロー(流れ)を考えるための思考ツール

 

参考)レンプフラ―教授からの示唆

  1. システム思考を地理の具体的な学習内容に結びつけること。概念的な学習に終始しないこと。
  2. コンピテンシーの2つの次元を考慮し準拠すること。生徒を前にしたら両次元を独立したコンピテンシーとして育成するとともに,長期的な教育目的としては両次元を包括的に捉えて適切に育成すること。
  3. 一貫した授業原理やスパイラルカリキュラムのような累積的なアプローチに組み入れること。
  4. つながりを持った学習内容同士を作用ダイアグラムやコンセプトマップとして地理の授業で扱い,グラフィカルなイメージを統合させていくこと。
  5. オープンエンドな学習課題を準備すること。システムに適応した解決策についての対話的なディスカッションを授業で行うこと(例えばミステリーという手法がある)。
  6. メタ思考様式を省察すること(システム思考者は全体に対する視野,要素と関連性が時間とともに変化することで示されるパターンやトレンドを認識すること等の習慣を持っている)。
  7. 直感の逆をつくような事例を扱うこと。複雑なシステムは多くの場合,直感的に感じるものとは反対の挙動を見せるため,直感の逆を意識化することで,非省察的で日常経験的な思い込みを避けることができる。
  8. 教員のシステムコンピテンシーを向上させること。システム思考を教えるためには非常に重要な条件である。教員自らが複雑で地理的な事象をシステミックに考え抜く力が必要である。
  9. 複雑性をそのままにすること。学習内容を恣意的に精選(削減)してはならない。様々な事象や内容は少しずつではあるが強くつながりあっている可能性がある。
  10. 不確実性に耐えること。複雑な問題やその状況は全ての側面や知識から問題を考察しても解決できるものではない。特に45分授業では不可能であり,教員は不確実性への耐性を身につけていなければならない。

(レンプフラ― アーミン 2018. 地理教育におけるシステムコンピテンシーモデルの開発. 新地理66(3), 41-48) 

参考WEB


システムシンキング:教訓「ボルネオの猫」の物語

 

物事の相互依存関係を理解していないと、解決策がより多くの問題の原因となる

 

良い問題解決方法を見つけようと思うなら、シンプルな問いに対しても複雑で内省的な思考が必要

 

問題の解決をデザインする

 

ピーター・センゲへのインタビュー

 

システム思考論理の紹介

 

https://youtu.be/rDxOyJxgJeA


海外のプロジェクト


GeoSysKoプロジェクト (地理教育システムコンピテンシー開発プロジェクト. ルツェルン大学,スイス・ドイツ)

SysThemaプロジェクト(ESD推進プロジェクトの一環. ルートヴィヒスブルク教育大学,ドイツ)

HEIGISプロジェクト(地理教育システムコンピテンシー開発プロジェクト. ハイデルベルク大学,ドイツ)