ミステリーでは,生徒は3 人程度の小グループを作り,20から30枚のカードが渡される。
最初に生徒は,教員が読み上げる複数( 3 つ程度)のストーリーを聴く。これらのストーリーは断片的であり,なおかつ互いに内容が噛み合わないため,生徒の頭には疑問や謎(ミステリー)が生じる。
この謎を解くため,カードに書かれた事象を並び替えてつながりを探す。うまくつながると謎が解けるようになっている。そのためミステリーという名前がつけられている。
こうした推理小説の探偵のような学習活動を通じて生徒は分類,課題分析,仮設の検証,推測,演繹・帰納的思考,原因結果といった思考スキルを活用することになる。この思考スキルは現実社会における出来事の背景を理解するためにも,地理的事象のパターンやプロセスを考える際にも必要となるスキルである。そして,考え方を学ぶためには,省察によって自己のメタ認知を意識化することが最も重要である。
よくある落とし穴
(検討中)
1. イギリス発祥
David Leat(ニューカッスル大学)を代表とする Thinking Through Geography (TTG) プロジェクト(1998年)
課題解決的で構成主義的な手法を取り入れた地理学習を提唱したプロジェクト
※イギリスでも高く評価(1998年のイギリス地理学協会金賞受賞)(志村2012より)
TTGのうちの一つがミステリー(他には生活グラフ,アウトサイダーなどがある)
2. オランダ経由
Leon Vankan (ナイメーヘン・ラドバウド大学),Joop van der Schee(アムステルダム自由大学)らによる Leren denken met aardrijkskunde (2004年) ※TTGの和蘭語訳
教員養成課程をはじめ,授業でも取り入れられる
(基本的にはTTGの思想をそのまま導入したと考えられる)
3. ドイツ経由
Stephan Schuler(ルートビヒスブルク教育大学) らによる Denken lernen mit Geographie (2007年) ※TTGの独逸語訳
教員養成課程(特に試補研修セミナー)においてまず扱われ始め,授業にも広がる
ミステリーが特に取り上げられる
Thomas Hoffmann(カールスルーエ教員養成校)
ミステリーを「(ESDにとって重要な)システム思考を育む手法」として強調する(2013年頃以降)
(TTGの頃からシステムへの言及はあったが,ドイツで強調されるようになる)
4. 日本
2000年代にリートの著作をゼミ等で扱った国内の大学がある(そこに参加していた韓国の研究者が、韓国語で翻訳・出版したとのこと)。
4.1 高橋敬子(未来のためのESDデザイン研究所)が研究・実践開発(2017年) ※TTG自体は以前から既知。
4.2 地理教育SA研究会(第55回研究会・講演会,第56回,第57回,第58回)
5. 韓国
・書籍名:사고기능 학습과 지리수업 전략(思考技能学習と地理授業戦略)
・出版年:2013年
・著者(訳者): 조철기(チョ・チョルギ)
・出版社:教育科学者
http://www.kyoyookbook.co.kr/shop/item.php?it_id=1354084830&fbclid=IwAR0FN3GRCAFus-Amx12CQwCIE7AH351kRNAevzUV8xGLDUCEzTFJHmJwE-0
(JaYeon Yang氏による情報提供)