第57回研究会

報告題名 「イギリス地理教育におけるミステリー活動の提案~TTG プロジェクトから」

梅村松秀(ERIC 国際理解教育センター)

・Thinking Through Geography’とは、

TTG は、ニューカッスル大学、David Leat をはじめとする地理教育関係者による’Thinking Through Geography Project(TTG プロジェクト)として1990 年代後半実践され、公刊物として1998、2001、2004、2006 年と版を重ね、’More Thinking Through Geography’(2000)の発表、イギリス地理学協会GA は1998 年のGA Award として成果をたたえた。ミステリーは、TTG プロジェクトに示される8 つの戦略の一つである。

 

・ミステリー活動とは

ミステリー活動は、各グループに16~30 前後の情報カードが入った封筒が配布され、それらカード情報と関連資料を活用しながら、与えられた謎解き(ミステリー)の命題にグループで取り組み、謎解きの結果を報告しあうことで、命題とそれにかかわる要因、課題等の共有を図ることと特徴づけられる。

 

・ミステリー活動の地理学習における意義~概念重視とメタ認知

ミステリー活動についてのこれまでの報告は、関連情報の結びつけ活動の中にシステムとしての特性を見出すことに、システムアプローチとしての技法とそれによる新たな気づき(新たな知)の創出の意義を強調する。

 

これに対して、事例「南ウェールズの産業構造の変化」において、ミステリー活動の内容として明示されるのは「原因と結果」、そして「分類」の二つの概念である。D.Leat は、科学教育において基本的なるものの、地理教育において重視されてこなかったと指摘する。システムアプローチが伝統的な科学の手法の更なる先を目指したものであるとするなら、TTG プロジェクトにおけるミステリーは、従来の科学的手法を地理教育の概念の一つとして意識化を図ることの重要性を指摘するものである。

 

ミステリー活動におけるもう一つのねらいは、グループ活動それ自体にある。すなわち、多様な能力をもつ個人の構成によるグループ活動は、問題解決への取り組みにあたって、個々の学習者の認知的葛藤(cognitiveConflict)の表面化の場であり、既知の知にたいする再構成や新たな知への構造化(Construction)のプロセスとしてとらえられることの重要性を強調する。


(配布資料より一部抜粋)


研究会の様子